肛門疾患について
肛門疾患の一種である痔ができると、肛門周辺にかゆみや痛み、出っ張り、出血などの症状が現れ、生活の質の低下を招きます。肛門に痔のような異常が発生したとしても、羞恥心から受診を躊躇してしまう方が多いですが、症状が強くなり我慢できずに受診したときには深刻な状態になっている可能性が高いです。
当院では患者様のプライバシーに最大限配慮し、相談しやすく安心して治療を受けられる環境を整備しています。何かお悩みの症状がありましたら、お気軽にご相談ください。
※手術が必要と判断される場合、連携している専門医療機関をご案内します。
痔の種類
いぼ痔
内痔核
内痔核は、肛門内側の直腸粘膜に発生したいぼ状の腫れです。
肛門周辺に負担がかかることで静脈叢がうっ血して膨らむことで発生します。直腸粘膜には知覚神経が走っていないため、痛みを感じることがありません。そのため、初期では腫れに伴う違和感や出血が主な症状となります。
なお、放置すると次第に痔核が大きくなり、肛門から脱出して痛みを感じることがあります。 痔核が脱出していない状態、もしくは指で脱出した痔核を押し戻せる状態は、軟膏や座薬を用いた薬物療法、排便習慣や生活習慣の見直しにより改善が期待できます。
ただし、指で脱出した痔核を押し戻せない状態、あるいは痛みや出血が持続する状態では手術が必要となります。
外痔核
外痔核、肛門外側の皮膚に発生したいぼ状の腫れです。
肛門周囲の血管が破綻し、血栓ができることもあります。(血栓性外痔核)血栓を伴う外痔核ではより痛みが強く現れます。放っておくと痔核が消退していくこともありますが、消退しない場合は、局所麻酔下にて血栓除去が必要となります。
強い症状が現れている場合はすぐに治療を受けましょう。
切れ痔(裂肛)
切れ痔(裂肛)とは、肛門の皮膚が切れたり避けたりして損傷した状態です。
便秘による硬い便や下痢による勢いの強い便が通過した際に、肛門皮膚が切れて傷が生じることがあります。この損傷部から出血が発生し、便やトイレットペーパーに血液が付着したことがきっかけとなって受診される方も少なくありません。
切れ痔は再発しやすい特徴があるため、軟膏や座薬により傷や痛みを解消することに加え、根本的な原因を改善するために下剤の使用や排便習慣の改善が必要です。
肛門周囲膿瘍、痔ろう
肛門周囲膿瘍とは、直腸と肛門の境目にある肛門陰窩(こうもんいんか)から細菌が入り込み、炎症が発生して化膿した状態です。下痢など勢いの強い便が肛門陰窩に入り込むことで感染するケースが多いです。
肛門周囲膿瘍の主な症状には、疼痛、熱感、膿、発熱などが挙げられます。肛門周囲膿瘍が長期間続くと、貯留した膿が皮膚に向かってトンネルを形成し、体外に排膿されます。このトンネルが残った状態を痔ろうと呼びます。
痔ろうは、トンネルの発生位置・方向・深さなどから複数の種類に分けられ、様々ある痔の種類のなかでも特に診断・治療が困難とされています。他の痔と違い、排便習慣の改善や薬物療法では改善効果がさほど見込めず、進行するとがんになる可能性もあるため、早期に手術を行うことが大切です。
よくある症状
肛門の出っ張り・膨らみ
肛門の出っ張りや膨らみの原因には、皮垂、脱肛を伴う内痔核、外痔核、直腸脱、見張りいぼ、肛門ポリープなどが挙げられます。頻度は少ないですが、直腸に発生した大腸ポリープが脱出すると出っ張りとして感じられることがあります。大腸ポリープは肛門ポリープと違い、放置するとがん化する恐れがあるため、早期治療が欠かせません。
肛門からの出血
肛門からの出血の主な原因には、いぼ痔や切れ痔などが挙げられます。なお、大腸炎や大腸がんなどの深刻な疾患が原因となることもあるため、疑わしい場合は大腸カメラ検査をご案内します。
肛門の痛み
肛門周辺の痛みの主な原因には、切れ痔や血栓性外痔核、肛門周囲膿瘍、肛門ヘルペスなどが挙げられます。なお、内痔核も脱肛が悪化すると下着などに擦れて痛みを感じることがあります。特に、いぼ痔が脱出したままの状態となる嵌頓痔核では、腫れが強く、激痛に襲われます。
肛門のかゆみ
切れ痔や血栓性外痔核は痛みを感じますが、軽症例の場合はかゆみとして認識することがあります。かゆみがはっきりと現れる場合、肛門部皮膚炎(湿疹)や白癬症・カンジダ症(カビの感染)、肛門ヘルペス(ウイルス感染)などの可能性があります。
排便困難
排便が困難な場合、肛門が狭窄している可能性があります。肛門狭窄の主な原因には痔核や直腸脱、直腸瘤などがありますが、大腸がんなどの可能性もあります。そのため、症状次第では精密検査として大腸カメラ検査をご案内することがあります。
文責:山高クリニック 院長 山高 浩一